アメリカ向けに食品を輸出する際、必ず直面するのがFDA(Food and Drug Administration)への対応です。
「FDA認証が必要」「FDAエージェントを探している」という相談は多いものの、実際には「FDA認証」という制度は存在せず、正確には施設登録や事前通知などの手続きが必要になります。
本記事では、アメリカ向け食品輸出で実際に必要なFDA対応の内容と、FDAエージェント(米国代理人)の役割、選定時のポイントを実務目線で解説します。
目次
「FDA認証」という誤解を整理する
まず、最も重要なポイントから説明します。
「FDA認証」という制度は存在しません。
日本では「アメリカに食品を輸出するにはFDA認証が必要」という表現をよく耳にしますが、これは正確ではありません。
FDAは認証機関ではなく、規制当局です。つまり、FDAが「認証する」のではなく、FDAが定めた規制に対して、事業者が自ら適合させるという構造です。
具体的には、以下のような対応が必要になります。
- 施設登録(Food Facility Registration)
- 事前通知(Prior Notice)
- ラベル要件の遵守(Nutrition Facts、アレルゲン表示等)
- FSVP(外国供給業者検証プログラム)
これらを総称して「FDA対応」と呼ぶのが適切です。
アメリカ向け食品輸出で実際に必要なFDA対応
施設登録(Food Facility Registration)
何をするのか:
アメリカ向けに食品を製造・加工・包装・保管する施設は、FDAに登録する必要があります。これは、米国バイオテロ法に基づく要件です。
誰が登録するのか:
- 日本の製造施設(工場)
- 必要に応じて、包装施設や保管施設も登録対象
登録に必要な情報:
- 施設名・住所
- 製造する食品のカテゴリー
- 米国代理人(US Agent)の情報
注意点:
- 登録は2年ごとに更新が必要(偶数年の10月1日〜12月31日)
- 登録番号(Registration Number)が発行される
- 登録自体は無料
事前通知(Prior Notice)
何をするのか:
食品を米国に輸入する際、到着前にFDAに対して事前通知を行う必要があります。
誰が提出するのか:
- 通常は輸入者(米国内の受け取り側)
- または輸入者が指定した代理人
提出期限:
- 海上輸送:到着8時間前まで
- 航空輸送:到着4時間前まで
必要な情報:
- 製造者情報
- 輸送情報(船名、便名等)
- 製品情報(品目、数量等)
- 到着予定日時
注意点:
事前通知が適切に提出されていないと、税関で貨物が差し止められる可能性があります。
ラベル要件(Nutrition Facts等)
何をするのか:
FDAが定めるラベル表示要件に従って、製品ラベルを作成する必要があります。
主な表示項目:
- Nutrition Facts(栄養成分表示) – 必須(一部例外あり)
- Ingredients(原材料表示) – 含有量の多い順に記載
- アレルゲン表示 – 主要8品目(牛乳、卵、魚、甲殻類、木の実、小麦、ピーナッツ、大豆)
- Net Weight(内容量) – メートル法とUSカスタマリー単位の併記
- 製造者・販売者情報 – 米国内の住所
注意点:
- 日本のラベルをそのまま英訳しても、FDA要件を満たさない場合が多い
- 栄養成分の計算方法や表示単位が日本と異なる
- 特定の健康訴求(Health Claim)には別途承認が必要
ワンポイント:ラベルは最後に作らない
ラベル作成は「デザインの問題」ではなく、法規制への適合です。デザインを先に確定させてから法規確認をすると、表示スペースが足りない、表現が使えない、といった問題が頻発します。
特に栄養成分表示(Nutrition Facts)は、計算方法や表示形式が厳格に定められているため、専門家に確認しながら進めることを強くおすすめします。
FSVP(外国供給業者検証プログラム)
何をするのか:
米国の輸入者は、外国の供給業者(日本の製造者)がFDAの安全基準を満たしていることを検証する必要があります。
誰が対応するのか:
- 基本的には米国の輸入者
- ただし、日本側でもFSVPの要件を理解しておく必要がある
主な内容:
- 供給業者(日本の製造者)のハザード分析
- 供給業者の適格性評価
- 継続的な監視
注意点:
FSVPは比較的新しい要件(2017年施行)であり、米国の輸入者側でも理解が不十分な場合があります。日本側から情報提供や協力を行うことで、スムーズに進められます。
FDAエージェント(米国代理人)とは何か
施設登録を行う際、米国代理人(US Agent / FDA Agent)の指定が必須です。
米国代理人の役割:
- FDAと日本の製造者の間の連絡窓口
- FDAからの通知を受け取り、日本側に伝達
- 緊急時の対応窓口
米国代理人の要件:
- 米国内に所在していること
- 米国内に物理的な住所を持っていること(私書箱不可)
- 営業時間中に連絡が取れること
米国代理人が「しない」こと:
- 製品の輸入手続き
- ラベル作成
- FDA査察への立ち会い(必須ではない)
米国代理人はあくまで「連絡窓口」であり、FDA対応全体をサポートするわけではありません。そのため、米国代理人の登録だけでFDA対応が完了するわけではないという点に注意が必要です。
FDAエージェントを選ぶ際のチェックポイント
FDAエージェント(米国代理人)を選定する際、以下のポイントを確認することをおすすめします。
日本企業・食品業界の実績があるか
食品業界、特に日本企業との協業経験があるエージェントは、日本側の進め方や期待値を理解しています。過去の実績や対応実績を確認しましょう。
米国代理人業務以外のサポート範囲
米国代理人登録だけでなく、以下のようなサポートを提供しているかを確認します。
- 施設登録の代行
- ラベル要件の確認・作成サポート
- 事前通知の代行
- FSVPに関するアドバイス
- 輸入者とのコーディネート
日本語でのコミュニケーションが可能か
FDAからの通知や問い合わせ内容を日本語で説明してくれるかは重要です。英語のみの対応の場合、社内での共有や判断が遅れる可能性があります。
緊急時の対応体制
FDAからの緊急通知や、税関での差し止めなど、トラブル発生時の対応体制を確認しておくと安心です。
費用の透明性
米国代理人の年間費用、施設登録代行費用、その他のサポート費用が明確に提示されているかを確認します。後から追加費用が発生しないよう、事前に確認しましょう。
輸入者(バイヤー)との連携実績
米国の輸入者やディストリビューターと連携した経験があるエージェントは、輸入者側の要件も理解しているため、スムーズに進められます。
FDA対応の実務フロー
アメリカ向け食品輸出のFDA対応は、以下のような流れで進めます。
- 製品・用途の整理
何を、どのような形で、誰に販売するのかを明確にします。製品カテゴリーによって要件が異なるため、この整理が重要です。 - FDAエージェント(米国代理人)の選定
実績、サポート範囲、費用を比較し、FDAエージェントを選定します。 - 施設登録
米国代理人の情報を含めて、製造施設をFDAに登録します。登録番号が発行されます。 - ラベル要件の確認・作成
栄養成分表示、原材料表示、アレルゲン表示などを確認し、FDA要件に準拠したラベルを作成します。 - 輸入者の確定・FSVP対応
米国の輸入者を確定し、FSVP要件についても確認・対応します。 - 事前通知の提出
出荷前に、事前通知を提出します(通常は輸入者側が対応)。 - 出荷・通関
製品を出荷し、米国で通関手続きを行います。 - 継続的な対応
施設登録の更新(2年ごと)、ラベル変更時の再確認など、継続的な対応が必要です。
よくある誤解と失敗例
「FDA認証を取れば輸出できる」
前述の通り、FDA認証という制度は存在しません。施設登録、ラベル要件、事前通知など、複数の要件を満たす必要があります。
「米国代理人に登録すれば完了」
米国代理人は連絡窓口であり、ラベル作成や事前通知などは別途対応が必要です。米国代理人登録だけでFDA対応が完了するわけではありません。
「日本のラベルを英訳すれば大丈夫」
日本のラベルをそのまま英訳しても、FDA要件を満たさない場合が多いです。特に栄養成分表示は計算方法が異なります。
「一度対応すれば永久に有効」
施設登録は2年ごとに更新が必要です。また、製品やラベルを変更した場合は、再度確認が必要です。
「輸入者側がすべて対応してくれる」
輸入者によって対応範囲が異なります。施設登録やラベル作成は日本側で対応する必要がある場合が多いです。
まとめ:FDA対応は「理解」が9割
アメリカ向け食品輸出のFDA対応において、最も重要なのは「何が必要で、何が不要か」を正確に理解することです。
「FDA認証」という誤解から始まり、不要なサービスに費用を払ってしまったり、逆に必要な対応を漏らしてしまったりするケースは少なくありません。
信頼できるFDAエージェントを選び、早い段階で要件を整理することで、スムーズな輸出開始が可能になります。
ご相談について
アメリカ向け食品輸出のFDA対応、施設登録、ラベル作成、米国代理人の選定について、検討段階からのご相談も承っています。
「まずは自社製品が米国向けに問題ないか確認したい」という段階から対応可能です。


