米国税関・国境警備局(CBP)は2026年11月6日、連邦官報(Federal Register)において、「外国人輸入者(Foreign Importer of Record)」に対する新たな要件を定める規則を公表した。本規則は、2026年6月に発出された大統領令(Executive Order 14411「Strengthening Customs Enforcement」)に基づくもので、米国外に拠点を持つ企業・個人が自社名義で米国への輸入通関を行う場合の条件を厳格化する内容となっている。日本から米国へ食品・飲料を輸出し、自社を輸入者(Importer of Record)として通関している企業にとっては、今後の輸入体制の見直しが必要になる可能性がある。
今回の発表内容
CBPは、連邦規則集(19 CFR)第110部を新設し、「米国輸入者(U.S. Importer of Record)」と「外国人輸入者(Foreign Importer of Record)」を明確に区分した。米国輸入者に該当するのは、米国市民または永住者である個人、あるいは米国法に基づき設立され米国内に所在し、かつ株式の51%以上を米国市民・永住者が保有・支配する法人等に限られる。これに当たらない輸入者(日本法人である日本企業の多くはこれに該当する)は「外国人輸入者」として扱われる。
制度・規則の説明
本規則は、通常の事前意見募集を経た「確定規則(Final Rule)」ではなく、先に施行しつつ意見を募集する「暫定最終規則(Interim Final Rule)」として公表されている。発効日は2027年1月5日で、同日まで意見を受け付ける(docket: USCBP-2026-1387)。通関業者(licensed customs broker)については、一定の条件下で対応期限の延期を申請できるが、2027年5月6日までには全面的な対応が求められる。
主な変更点
最大の変更点は、外国人輸入者が自社名義で正式通関(formal entry)または一部の略式通関(informal entry)を行うには、CTPAT(Customs-Trade Partnership Against Terrorism、対テロ貿易官民協調プログラム)の認証を受けていることが条件となった点である。CTPAT認証を受けていない外国人輸入者は、自社名義での通関申告ができず、CTPAT認証済みの通関業者を起用し、その通関業者自身が輸入者(IOR)として申告を行う体制に切り替える必要がある。
これに伴い、通関業者側にも、取引先が米国輸入者の基準を満たすかどうかを事前に確認し、関連する記録を5年間保管する新たな義務が課される(19 CFR 111.21、111.23、111.29)。虚偽の輸入者申告が確認された場合、通関業者には最大3万ドルの罰金や通関業者免許の停止・取消し、関税法(19 U.S.C. 1592)に基づく制裁などが科され得る。また、米国輸入者としての申告内容に不正確な点があった場合、ライブエントリー(通関前の検査・書類審査)の適用や、即時引き取り(immediate delivery)特権の停止につながる可能性もある。
なお、CBPは大統領令が想定していた「外国人輸入者による略式通関の禁止」については今回の規則に含めておらず、今後の実施状況を見て別途検討するとしている。
日本企業への影響
日本から米国へ食品を直接輸出し、米国法人を介さず自社を輸入者として通関している企業は、今回の規則により、CTPAT認証の取得、またはCTPAT認証済みの通関業者を輸入者とする体制への切り替えのいずれかを検討する必要が生じる。一方、既に米国内の子会社や独立した米国輸入者を輸入者として通関している企業については、直接的な影響は限定的である。
なお、本規則はCBPの通関手続き上の輸入者要件に関するものであり、FDAのFSVP(Foreign Supplier Verification Program)における輸入者要件や、食品の表示・安全基準そのものを変更するものではない。両者は別の制度である点に注意が必要である。
今後確認すべきポイント
自社の米国向け輸出において、現在誰が輸入者(Importer of Record)として通関申告を行っているかを確認する必要がある。自社が輸入者となっている場合は、CTPAT認証の有無・取得の可否、または通関業者に輸入者としての役割を移管できるかを早期に通関業者と協議することが望ましい。また、CBPは今回見送った少額貨物($2,500以下)の略式通関の取扱いについて、今後追加の規則を検討する可能性があるため、継続的な情報確認が必要である。


