米国食品医薬品局(FDA)は2026年10月23日、輸入冷凍水産物を対象とした経済的動機による品質偽装(Economically Motivated Adulteration, EMA)のサーベイランス結果を公表しました。氷衣(アイスグレージング)を利用した重量不足(short weighting)が広く確認され、違反のあった事業者はFDAのImport Alert 99-47の対象に追加されました。日本からの水産物輸出に直接の新しい義務が生じるものではありませんが、輸入冷凍水産物に対するFDAの監視強化を示す動きとして確認しておく価値があります。
今回の発表内容
FDAは2025年5月20日から9月25日にかけて、輸入された包装済み冷凍水産物26サンプル(エビ21、カニ1、イカ1、ザリガニ1、カキ1、シログチ(scad)1)を9か国・25事業者から収集し、正味重量の検査を実施しました。使用した分析法はAOAC公式法963.18です。その結果、12サンプル(46%)が表示重量を下回る「違反」と判定され、不足率は1.42%から最大32.75%に達しました。違反が確認されたのはカナダ、中国、インド、インドネシア、韓国、ベトナムの6か国・11事業者で、該当する12件の貨物はすべて米国への搬入を拒否されました。なお、この調査結果を公表したFDAのページには日本および日本企業への言及はありません。
制度・規則の説明
今回の発表は新しい規則(Rule)やガイダンス(Guidance)の制定ではなく、既存の連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C Act)第402条(b)に基づく重量表示規制の摘発結果報告です。同条は、食品から価値ある成分を除いたり増量剤を加えたりして実際より良く見せる行為などを「adulteration(品質偽装)」として禁止しており、冷凍水産物の氷衣を正味重量に含めて表示することもこれに該当し得ます。違反が確認された事業者とその産品は、既存のImport Alert 99-47「Detention Without Physical Examination of Human Food Products That Appear to be Adulterated for Economic Gain」のレッドリストに追加されました。このアラート対象になると、原則として物理的な検査を経ずに入港時点で自動的に留置(Detention Without Physical Examination, DWPE)されます。なお同日、FDAは水産物の「米国産(U.S.-Origin)」表示に関するドラフトガイダンス(パブリックコメント期限2026年12月28日)も別途公表していますが、これは国内事業者向けの任意の原産地表示指針であり、輸入規制そのものには直接関係しません。
主な変更点
Import Alert 99-47のレッドリストに、氷衣増量による重量不足が確認された11事業者(カナダ・中国・インド・インドネシア・韓国・ベトナム)が新たに追加されました。FDAは2022〜2024年の前回調査(28サンプル中10件、36%が違反)と比較し、2025年調査では46%というより高い違反率を示したとして、冷凍水産物の重量表示に関する監視を継続・強化する方針を示しています。今回追加された事業者に日本企業は含まれていません。
日本企業への影響
今回の措置によって、日本から米国へ冷凍水産物を輸出する企業に新たな法的義務が生じたわけではありません。正味重量表示に関する規制自体は従来からFD&C Actに基づき存在しており、今回はその執行(エンフォースメント)結果が公表されたものです。ただし、エビ・イカ・カニ・カキなど氷衣を伴う冷凍水産物を輸出している、または輸出を検討している企業にとっては、FDAが氷衣を含めた正味重量の正確性を重点的にチェックしている実態を示す材料となります。該当する企業は、出荷前にAOAC 963.18法等に準拠した正味重量検査を自社または第三者機関で実施し、検査記録を保管しておくことが望ましいでしょう。将来サンプリング対象となり違反が指摘された場合、Import Alert対象に追加されると当該事業者の貨物は自動的に留置され、解除には第三者検査結果の提出など一定の対応が必要となります。
今後確認すべきポイント
FDAが今後も同種のサーベイランスを継続し、Import Alert 99-47のレッドリストに事業者を追加していく可能性があるため、冷凍水産物輸出事業者は定期的に同アラートの対象事業者リストを確認しておくとよいでしょう。同日公表された「U.S.-Origin Statements on Seafood」ドラフトガイダンスは米国産表示に関する任意の指針であり、現時点で輸入要件への影響はありませんが、最終化後の内容を確認する価値はあります。日本から冷凍水産物を輸出する際は、梱包時の氷衣の厚さや重量計算方法について社内基準を再確認し、表示重量と実重量の差異を最小限に抑える管理体制を整えておくことが推奨されます。


