FDAは、ヒト向け食品のハザード分析・リスクベース予防的管理(PCHF)に関するガイダンス文書「Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food」に、化学的ハザードの管理を扱う新しい第12章「Preventive Controls for Chemical Hazards」のドラフト版を追加しました。米国で食品施設登録を行い、Preventive Controls(21 CFR Part 117)の対象となっている日本の食品輸出企業にとって、自社の食品安全計画を見直す際の参考情報になります。
今回の発表内容
2026年10月22日、FDAは上記ガイダンス文書に第12章「化学的ハザードに対する予防的管理」のドラフト版を追加したと発表しました。この追加は2026年10月23日付のFederal Register官報にも「Notice of availability(公表通知)」として掲載されています(Docket番号: FDA-2016-D-2343)。パブリックコメントの受付期限は2027年1月21日です。
重要な点として、これはFDAが法的拘束力を持つ規則(Final Rule)を新設したものではありません。FDAは本文で「This draft guidance is not final nor is it in effect at this time(本ドラフトガイダンスは最終版ではなく、現時点で効力を持たない)」と明記しています。本ガイダンスは、すでに施行されている21 CFR Part 117(いわゆるPCHF規則)の要件をどのように満たすかについて、FDAの現時点の考え方を示すものであり、新たな義務を課すものではありません。
制度・規則の説明
21 CFR Part 117は、連邦食品・医薬品・化粧品法415条に基づき食品施設登録(Food Facility Registration)が必要なヒト向け食品の施設に対し、ハザード分析と予防的管理(HARPC)に基づく食品安全計画の策定・実施を義務付ける規則です。対象には米国向けに食品を輸出する外国の施設も含まれますが、適格施設(qualified facility)や、水産物HACCP・ジュースHACCP・低酸性缶詰食品(LACF)など別の規則の対象となる食品カテゴリーには、個別の適用除外・代替要件があります。今回追加された第12章は、Part 117が求める「危害分析」のうち、化学的ハザードの特定・管理方法について解説するものです。
主な変更点
新設の第12章では、食品に影響を及ぼしうる化学的ハザードとして、放射性物質、残留農薬・動物用医薬品、天然毒素、腐敗、未承認の食品添加物・着色料添加物に加え、鉛・カドミウム・ヒ素などの有害元素、ダイオキシン、PFAS(有機フッ素化合物)といった環境汚染物質、さらに製造工程で生成する化学物質(プロセス関連汚染物質)を挙げ、それぞれがどのような場合に「既知または合理的に予見可能なハザード」として予防的管理の対象になりうるかという考え方を示しています。具体的な管理手順そのものは本文には示されていません。
日本企業への影響
今回のドラフトガイダンスは新しい法的義務を創設するものではなく、既存の21 CFR Part 117の解釈を補足するものです。そのため、今回の発表によって米国向け食品輸入要件が直接変更されたわけではありません。
ただし、米国で食品施設登録を行い、Part 117の予防的管理(PCHF)要件の対象となっている日本の食品メーカー・輸出事業者にとっては、自社の食品安全計画(Food Safety Plan)における化学的ハザードの洗い出しや管理方法が、FDAの最新の考え方と整合しているかを確認する材料になります。特に残留農薬や重金属、PFAS等への懸念がある原材料を扱う事業者は、本ガイダンスの内容を把握しておく価値があります。なお、水産物HACCPやジュースHACCP、LACFなど別の規則体系の対象事業者は、本ガイダンスの直接の対象ではない点にも留意してください。
今後確認すべきポイント
本ガイダンスはドラフト段階であり、2027年1月21日までパブリックコメントを受け付けています。最終化(Final Guidance)の時期や内容が変更される可能性もあるため、自社がPart 117の対象かどうか、対象の場合は適用除外(適格施設など)に該当するかを含め、今後の正式版の公表状況を注視する必要があります。


