抹茶の残留農薬基準値、実際どう調べる?日米比較データ(2026年8月版)と農園・工場が確認すべき手順

「抹茶 農薬」で検索してこのページにたどり着いた方の多くは、恐らくもう少し先の疑問をお持ちだと思います。「実際、この農薬は何ppmまでなら大丈夫なのか」「一覧で比較できる資料はないのか」というところです。この記事では、農林水産省が公表している国別の残留農薬基準値比較データ(2026年8月3日時点調査)を使って、具体的な数値の見方と、農園・工場が米国向け出荷前に確認しておきたい手順を整理します。

なお、「そもそも日本とアメリカで残留農薬の考え方がどう違うのか」という基礎から知りたい場合は、先に抹茶の残留農薬、日本と米国はここが違うをご覧いただくことをおすすめします。この記事はその内容を前提に、より実務的な数値の調べ方に踏み込みます。

残留農薬基準値の基本的な仕組み(おさらい)

日本もアメリカも、残留農薬規制の基本的な考え方は「ポジティブリスト制度」です。農薬の有効成分ごとに、作物(茶であれば茶という区分)ごとに個別の残留基準値(MRL、米国ではTolerance)が定められており、基準値が設定されていない有効成分・作物の組み合わせは、原則として輸入が認められません。

ここで重要なのは、基準値は「農薬ごと」「作物ごと」「国ごと」にすべて個別に決まっているという点です。同じ農薬でも、日本と米国、あるいは同じ農薬でも茶と他の作物とでは、基準値がまったく異なることが普通にあります。

農林水産省の国別比較データで全体像をつかむ

農林水産省は、茶(緑茶・抹茶を含む不発酵茶)を対象に、日本・米国・EU・中国・韓国等21の国・地域について、約200種類の農薬有効成分の残留基準値を一覧化した比較資料を公表しています(2026年8月3日時点調査)。輸出前の全体感をつかむには、まずこの資料に目を通すのが実務上効率的です。

代表的な農薬について、日本・米国・EUの基準値(mg/kg)を抜粋すると、次のようになっています。

農薬名(一般名) 日本 米国 EU
イミダクロプリド 10 50 0.05*
アセタミプリド 30 30 0.05*
クロチアニジン 50 70 0.05*
ジノテフラン 25 25 0.01
ビフェントリン 30 30 30
クロルフェナピル 40 60 50
トルフェンピラド 30 30 0.05*
グリホサート 1 1 2
ブプロフェジン 30 20 0.05*

(出典: 農林水産省「茶 残留農薬基準値」比較資料、2026年8月3日時点調査。「*」は基準値=検出限界を示す注記)

一見して分かる傾向として、EUは他国と比べて基準値が極めて厳しく設定されている農薬が多い一方、米国は農薬によっては日本より基準値が高い(=規制が緩い)ケースもあります。「日本で厳しく管理されているから米国でも安全」とは限らず、逆に「日本の基準値に収まっていれば全部大丈夫」でもない、という点がこの表からも見えてきます。

比較表だけに頼ってはいけない理由

ここが、この記事で一番お伝えしたいポイントです。国別比較表は全体感をつかむには便利ですが、実際に米国向けに出荷する農薬については、必ず米国の一次情報(eCFR 40 CFR Part 180)で個別に確認することを強くおすすめします。理由は、比較表の数値と、実際の法令本文に微妙な違いや重要な注記があることがあるためです。

具体例を挙げます。上記比較表では、ジノテフランの米国基準値は「25」と記載されていますが、実際に米国の連邦規則(eCFR 40 CFR 180.603)を確認すると、茶に対する基準値は50ppmと規定されています。さらに、この条文には次のような注記があります。

“There are no U.S. registrations for tea.”(茶に対する米国内登録は存在しない)

つまり、数値としての基準値(Tolerance)は存在していても、それは主に「米国外で使用され、米国に輸入される茶」を想定した基準(インポートトレランス)であり、米国内でその農薬を茶に使う栽培自体は登録されていない、という状態です。輸出事業者にとっては、この「登録の有無」の注記こそが、単純な数値以上に重要な情報になります。

比較表は複数の情報源を統合する過程で、こうした注記や、どの版の規則を参照しているかによって、実際の条文とズレが生じることがあります。比較表は「まず全体感をつかむための一次スクリーニング」として活用し、実際に出荷するロットで使用した農薬については、必ず一次情報で個別に確認するのが実務上安全です。

農園・工場が確認すべき実務手順

比較表を踏まえたうえで、具体的には次の手順で確認を進めることをおすすめします。

  1. 使用した(使用予定の)農薬の有効成分名を特定する: 農薬の商品名ではなく、ラベルやJA(農業協同組合)の資料に記載されている一般名(有効成分名)を確認します。
  2. 農水省の比較表で全体感を掴む: 該当する農薬が「茶」の区分に掲載されているか、各国の基準値の傾向を把握します。
  3. 有効成分名でeCFR 40 CFR Part 180を検索し、個別に確認する: 「茶」に対する現行の基準値の有無・数値・登録状況に関する注記を確認します。基準値が設定されていない場合や、「米国内登録なし」等の注記がある場合は、その農薬が実際にどのような扱いになるか、専門家に確認することをおすすめします。
  4. 基準値が不明確・不利な農薬は使用を避けるか代替を検討する: 特に米国向けロットについては、栽培計画の段階で代替農薬を検討しておくと、後工程での手戻りを防げます。
  5. 使用農薬・散布日・希釈倍率等の記録を保持する: FSVP(外国供給業者検証プログラム)の検証や、輸入時の照会に備え、栽培記録を整理しておくことが実務上望ましいです。
  6. 残留農薬検査のタイミングを計画する: 収穫前後のタイミングで民間検査機関による残留農薬検査を実施できるよう、スケジュールに組み込んでおきます。

よくある誤解

  • 「日本の基準値以下だから米国でも安全」ではありません: 基準値は国ごと・農薬ごとに個別に設定されており、日本の基準を満たしていても米国の基準を満たすとは限りません。
  • 「比較表に数値が載っていれば安心」ではありません: 比較表は全体感を掴むための一次スクリーニングであり、実際の出荷判断は一次情報(eCFR)での確認が前提です。
  • 「昨年確認したから今年も同じ」ではありません: 基準値・登録状況は改正されることがあるため、出荷のたびに最新情報を確認するのが実務上安全です。

VIAWORKSができること

VIAWORKSでは、米国向け残留農薬基準についての簡易スクリーニング(使用農薬リストのご提供をもとに、eCFR 40 CFR Part 180を参照した基準値・登録状況の確認、リスクのある農薬の特定)を実施しています。栽培計画の見直しや代替農薬の検討が必要な場合の初期段階の確認としてご利用いただけます。詳しい進め方については無料相談でお気軽にお問い合わせください。

まとめ

抹茶・緑茶の残留農薬基準値は、農林水産省の国別比較データ(2026年8月時点)で全体感をつかむことができますが、実際に米国向けに出荷する農薬については、eCFR 40 CFR Part 180の該当条文を個別に確認することが欠かせません。比較表と一次情報とで数値や登録状況に違いが見られることもあるため、比較表はあくまで一次スクリーニングとして使い、最終確認は一次情報で行うという2段階のプロセスを徹底することをおすすめします。日米の残留農薬規制そのものの考え方の違いについては抹茶の残留農薬、日本と米国はここが違うもあわせてご覧ください。

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この記事の監修・運営について

VIAWORKS 輸出サポートチーム

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米国食品規制・輸出実務に携わり、FSVP Qualified Individual(QI)としてFDA・FSVP対応や米国向け食品輸出を支援しています。規制情報を扱う記事では、FDA・USDA・CBP等の公的機関・一次情報を優先して確認しています。

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