米国の輸入実務者向けサービス会社などからの案内で、「IEEPA関税の返金を求める集団訴訟(クラスアクション)が認定された」という情報が広まっています。VIAWORKSが米国国際貿易裁判所(CIT:U.S. Court of International Trade)の判断原文を確認したところ、事実の核心部分は裁判所の記録で確認できました。ただし、返金が確定したわけではなく、不確定要素も残っています。日本から米国へ食品・飲料を輸出し、現地の輸入者(Importer of Record)がIEEPA関税を支払っていた場合に関係する内容です。
今回の発表内容
CITのRichard K. Eaton判事は2026年10月8日、Freestyle World, Inc. v. United States Customs and Border Protection, et al.(Slip Op. 26-123、Court No. 26-01088)において、原告Freestyle World, Inc.が申し立てたクラスアクションの認定を認めました。
認定されたクラスの定義は、「2025年2月1日から2026年2月19日の間に、問題となった関税命令(Challenged Tariff Orders)に基づく関税を支払ったすべての輸入者(Importers of Record)」です。ここでいう「問題となった関税命令」とは、IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づき発動された、いわゆる「相互関税」等の関税命令を指します。これらは連邦巡回区控訴裁判所(Federal Circuit)がV.O.S. Selections事件で違法と判断し、米国最高裁判所がLearning Resources, Inc. v. Trump事件(2026年2月)でその判断を支持したものです。
認定はUSCIT Rule 23(b)(2)に基づくもので、対象者はオプトイン(参加申請)手続きなしに自動的にクラスへ含まれます。ただし、すでにIEEPA関税の返金を個別に提訴している事業者は、このクラスから除外されます。
制度・規則の説明
今回の認定は、裁判所が将来的に「関税命令の影響を受けた輸入申告(entry)について、IEEPA関税を考慮せずに liquidation(確定)または reliquidation(再確定)を命じる」ことを目指すための手続き上の一歩です。裁判所自身も、この認定が対象輸入者への関税返金につながることを「期待する」としていますが、クラス認定は返金命令そのものではありません。本案(merits)の判断はまだ行われておらず、政府側がクラス認定自体を不服として連邦巡回区控訴裁判所に上訴する可能性も残っています。
CBPは現在、IEEPA関税の返金について、ACE(Automated Commercial Environment)内のCAPE(Consolidated Administration and Processing of Entries)という仕組みを通じて、未確定(unliquidated)の輸入申告等から返金処理を段階的に進めている状況です。確定清算済みの申告への対応は、今後の裁判所の命令によって扱いが変わる可能性があります。
主な変更点
- クラスアクションとして認定されたことで、個別に訴訟を起こしていない輸入者も、原則として追加手続きなしにクラスの一員として扱われる。
- 対象期間は2025年2月1日〜2026年2月19日に支払われたIEEPA関税。
- 2026年10月13日(現地時間)に非公開の進行協議(status conference)が予定され、今後のスケジュールや政府側の対応方針が固まる見通し。
- 現時点でCBPに新たな返金義務や手続き変更を命じる裁判所命令は出ていない。
日本企業への影響
今回の認定自体は、FDAやCBPによる食品の輸入規制・手続きを変更するものではなく、日本から米国への食品輸入要件が直接変更されたわけではありません。
一方で、米国側の輸入者が2025年2月〜2026年2月の間にIEEPA関税(国別の「相互関税」等)を支払っていた場合、その輸入者はこのクラスの対象となる可能性があります。日本産食品・飲料を輸入している米国側のImporter of Record(提携輸入者やFSVP Importerなど)が該当する輸入申告を抱えているかどうかを確認する価値はありますが、返金額や実施時期は未確定であり、クラス認定自体が上訴審で覆る可能性も残ります。日本側の輸出企業が直接何らかの申請や対応を行う必要があるものではなく、関税負担者である米国側輸入者の状況を確認する形になります。
今後確認すべきポイント
- 2026年10月13日の進行協議以降に示される今後のスケジュールと、政府側の上訴の有無。
- CBPのCAPEを通じた返金対象の範囲(確定清算済み申告の扱いを含む)が、本件訴訟の進展とどう連動するか。
- 米国側の輸入者が自社の輸入申告について、対象期間のIEEPA関税支払い実績を確認し、必要に応じて通関士や貿易法の専門家に相談すること。


