FSVPで必要な書類・記録とは?輸入者が保管するものと日本の製造者が求められる資料を21 CFRから整理

米国向けに食品を輸出していると、米国の輸入者や商社から「FSVPのために、工程フローやHACCP関連の資料を出してほしい」と求められることがあります。何を、どの範囲で出せばよいのか、そもそも自社が作る書類なのか。この点で迷う日本の食品メーカーは少なくありません。

この記事では、FSVP規則(21 CFR Part 1 Subpart L)が輸入者に求める記録を一次情報から整理し、そのうえで、日本側が実務上求められやすい資料を「法律上の要求」と「実務上の慣行」に分けて説明します。

先に結論:書類を作成・保管する義務は輸入者にある

FSVPの義務を負うのは、米国の「輸入者(FSVP importer)」です。FDAの説明では、輸入者とは輸入される食品の米国内の所有者または荷受人(consignee)を指し、そのどちらもいない場合は、外国の所有者が指名した米国内の代理人が輸入者となります(21 CFR 1.509(b))。日本の製造者そのものがFSVPの記録を作成・保管する義務を、規則上直接負うわけではありません。

ただし、輸入者はハザード分析やサプライヤーの評価・検証を行うために、日本側の情報を必要とします。そのため、実務では日本の製造者に資料提供や質問票への回答が求められます。この「資料提供」の中身は規則が一覧で定めているものではなく、輸入者が自社のFSVPの中で必要と判断したものです。ここが混乱しやすい点です。

輸入者が作成・保管する記録(法的要求事項)

21 CFR 1.504〜1.510に基づき、輸入者は食品ごとに概ね次の内容を文書化します。

記録・文書 根拠 内容
ハザード分析 1.504 輸入する食品の種類ごとに、生物的・化学的・物理的ハザードを特定し、発生の可能性と重篤度を評価します。結果がどうであっても書面で作成します。
サプライヤーの評価と承認 1.505 ハザード分析の結果、ハザードを誰が管理しているか、サプライヤーの実績(FDAの警告書・輸入警告(import alert)を含む)、食品安全の履歴などを考慮して評価・承認します。
検証活動の決定と実施記録 1.506 現地監査、サンプリング・検査、サプライヤーの食品安全記録のレビューなどから、実施する活動と頻度を輸入前に決め、実施結果を記録します。
是正措置の記録 1.508 サプライヤーが要件を満たしていない場合の対応(サプライヤーの使用停止を含む)を、速やかに実施・記録します。
再評価の記録 1.505(c) 新しい情報を得たときは速やかに、そうでなくても3年以内に再評価します。

これらの実施は、Qualified Individual(QI)が行うか監督する必要があります。QIの要件は別記事のFSVP Qualified Individual(QI)とはで整理しています。

保管期間・言語・提出の条件(21 CFR 1.510)

  • 記録は、原本・真正な写し・電子記録のいずれでもよく、作成時と修正時に署名・日付を付けます。
  • FDAの要請があれば速やかに提供します。英語以外で記録している場合は、合理的な期間内に英訳を提供する必要があります。
  • 記録を別の場所に保管している場合も、要請から24時間以内に現場で提供できる状態であれば認められます。
  • 保管期間は、作成または受領から少なくとも2年間です。手順書など「プロセスや手順の記録」は、使用をやめてから2年間保管します。

なお、輸入申告(エントリー)の際には、各ラインエントリーについて輸入者の氏名・メールアドレス・FDAが認める固有施設識別子(UFI)をCBPに電子的に提供する必要があります(1.509(a))。FDAは、2022年7月24日以降、DUNS番号などFDAが認めるUFIの提出を求めています。この点は書類というより通関時の手続きですが、輸入者が正しく識別されていないと、FSVPの実施自体が確認できません。

日本の製造者が求められやすい資料(実務上の慣行)

ここからは、規則が列挙しているものではなく、輸入者が1.504〜1.506の判断をするために実務上求められやすい資料の例です。輸入者・商品・ハザードによって異なるため、「これを出せば足りる」という固定のリストはありません。

求められやすい資料(例) 輸入者が確認したい内容 関連する条文
製品仕様書・原材料一覧・アレルゲン情報 食品ごとのハザード分析の前提情報 1.504
製造工程フロー、食品安全計画(HACCPプラン等) ハザードを誰が・どの工程で管理しているか 1.504、1.505(a)
第三者監査の報告書、認証取得の状況 サプライヤーの食品安全管理の状況 1.505、1.506
FDA施設登録番号、FDAからの指摘・輸入警告の有無 サプライヤーの実績 1.505(a)
検査成績書(微生物・残留農薬・異物など) サンプリング・検査による検証 1.506
是正措置・回収の手順と過去の事例 問題発生時の対応能力 1.505、1.508

注意したいのは、認証や第三者監査の取得がそのままFSVP上の「十分な検証」になるわけではない点です。検証活動の種類と頻度は、ハザードの内容とサプライヤーの管理状況を踏まえて輸入者が決めます。重篤な健康被害や死亡につながりうるハザードをサプライヤーが管理している場合、輸入者は、輸入前と少なくとも年1回の現地監査(onsite audit)を実施する必要があります。ただし、その必要がないと判断する根拠を書面で示した場合は別の検証活動も認められます(1.506(d)(2))。現地監査は適格な監査員(qualified auditor)が実施し、記録します。

また、検証をサプライヤー自身に任せることはできません。サンプリング・検査を除き、サプライヤーが自らの検証を行って済ませることは認められていません(1.506(e)(2))。サプライヤーの検査成績書を提出すること自体は有用ですが、それだけでFSVPの検証にならない場合があります。

適用が変わるケース

すべての食品・輸入者に同じ書類が必要になるわけではありません。規則上、次のような分岐があります(詳細は21 CFR 1.501、1.502(b)、1.512)。

  • 対象外となる食品:水産食品およびジュースで、21 CFR Part 123またはPart 120(それぞれHACCP規則)の対象となるものは、FSVPの対象外とされています。これは「規制がない」という意味ではなく、別の規則(HACCP)の対象になるためです。
  • 低酸性缶詰食品(LACF):Part 113の対象となる食品には、より限定されたFSVPの要件が定められています(1.502(b))。
  • very small importer(極小規模の輸入者):人用食品の年間平均取引額が約100万米ドル未満(インフレ調整後)の輸入者などには、修正要件(1.512)が適用されます。この場合、1.504〜1.508などの通常の要件に代えて、サプライヤーから書面による保証を輸入前に取得し、少なくとも2年ごとに更新する形になります。ただし、1.502・1.503・1.509は引き続き適用されます。

自社の商品や取引先が修正要件の対象になるかどうかは、輸入者の規模やサプライヤーの区分で決まります。輸入者が極小規模かどうかは、日本側からは分かりにくいため、取引先に確認する必要があります。

日本の製造者が準備しておくとよいこと(VIAWORKSとしての実務上の推奨)

以下は法的な要求ではなく、輸入者とのやり取りを円滑にするためにVIAWORKSが実務上お勧めする準備です。

  1. 輸入者が誰になるのかを取引先と確認します(米国の所有者または荷受人か、外国所有者が指名した代理人か)。
  2. 製品ごとの仕様書・原材料・アレルゲン情報を最新の状態にしておきます。
  3. 工程フローとHACCP等の食品安全計画を、英語で提出できる形に整理します。
  4. 監査報告書、検査成績書、FDA施設登録番号をすぐに出せるよう保管します。
  5. 仕様変更・原材料変更・クレームがあった場合に、輸入者へ速やかに連絡できる体制にします。輸入者は新しい情報を得たときに再評価が必要になるためです。

自社が輸入者になれない・なりたくない場合

米国内に輸入者となる取引先がいない場合は、外国の所有者が米国内の代理人を指名して輸入者とする方法があります(1.509(b))。VIAWORKSのFSVPエージェントサービスでは、食品・製造施設・外国供給業者の情報をもとにしたFSVP文書の作成、ハザード分析、外国供給業者の評価・検証の設定、記録の管理・更新、FDAからの照会・記録要求への対応を支援しています。FSVPのみの依頼や、1SKUからの相談も可能です。料金は商品やSKU数により個別見積もりとなります。

FSVPの全体像から確認したい方は、米国輸出に必須のFSVPとはもあわせてご覧ください。

出典

本記事は2026年10月時点の公開情報に基づく一般的な解説です。個別の商品・取引形態への適用は、FDAの最新の情報を確認のうえ、個別にご判断ください。

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この記事の監修・運営について

VIAWORKS 輸出サポートチーム

VIAWORKS 輸出サポートチーム

米国食品規制・輸出実務に携わり、FSVP Qualified Individual(QI)としてFDA・FSVP対応や米国向け食品輸出を支援しています。規制情報を扱う記事では、FDA・USDA・CBP等の公的機関・一次情報を優先して確認しています。

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