FDA(米国食品医薬品局)は2026年8月27日付で、カリフォルニア州の食品輸入業者Union Trade Inc.に対し、FSVP(Foreign Supplier Verification Program:外国供給者検証プログラム)義務違反を理由とする警告書(Warning Letter)を発出しました。今回の措置は同社という個別事業者に対する法執行であり、FSVP制度そのものが変更されたわけではありませんが、FDAが輸入者のどのような点を重点的に確認しているかを示す実例であり、米国向けに食品を輸出する日本企業にとっても参考になる内容です。
今回の発表内容
警告書は、FDAが2026年4月6日・7日に実施した記録確認等(inspection)の結果に基づくものです。同社は生の大根(crisp radish)、殻付きピーナッツ、亜熱帯・熱帯果実、乾燥キノコなどを輸入していましたが、FDAはこれらの食品についてFSVPを策定していなかったと指摘しました。特に乾燥キノコについては、未申告の亜硫酸塩(sulfites)混入によりクラス2のリコールが2件発生していたにもかかわらず、是正措置を実施したことを示す記録が提出されなかった点が問題視されています。
FSVPとは
FSVPは、米国に食品を輸入する事業者(FSVP Importer)に対し、外国の供給者が米国の食品安全基準を満たす方法で食品を生産していることを検証するリスクベースの活動を義務付ける制度で、21 CFR Part 1 Subpart Lに規定されています。FSVP Importerは、輸入する食品ごとにハザード分析を実施し、そのハザードに応じたサプライヤー検証活動(監査、サンプリング・試験、供給者の食品安全記録の確認等)を実施・文書化する義務を負います。今回の警告書はガイダンスではなく、既存の連邦規則(21 CFR Part 1)違反を指摘する法執行文書である点に注意が必要です。
指摘された主な違反点
警告書では、以下の4点が具体的に指摘されました。
- FSVP未策定(21 CFR 1.502(a)):大根、ピーナッツ、亜熱帯・熱帯果実について、FSVPそのものが策定されていなかった。
- 是正措置の未文書化(21 CFR 1.508(a)):乾燥キノコのリコール後、是正措置を講じたとする記録が提出されなかった。
- ハザード分析の未実施(21 CFR 1.504(a)・(d)):各食品についてハザード分析を実施しておらず、他者が実施したハザード分析を確認・文書化した記録もなかった。
- サプライヤー検証活動の不備(21 CFR 1.506(b)・(d)・(e)):適切なサプライヤー検証活動の決定・実施に関する書面手順や記録が整備されていなかった。警告書は、供給者から提出されたHACCP System Certificateのような証明書のみでは、ハザード評価に基づく承認の裏付けとして不十分である旨も述べています。
FDAは同社に対し、15営業日以内に是正内容を記載した回答を提出するよう求めています。
日本企業への影響
今回の措置によって、日本から米国への食品輸入要件が直接変更されたわけではありません。ただし、FSVPの実施義務を負うのは米国側のFSVP Importerであっても、その実効性は輸出者である日本企業から提供される情報(原材料、製造工程、自社の食品安全管理の状況等)に大きく依存します。今回のケースは、(1)各原料についてFSVPが個別に策定されているか、(2)リコール等の問題が生じた際に是正措置の記録が適切に保存されているか、(3)供給者証明書だけでなく、ハザード評価に基づく検証が行われているか、という点をFDAが重点的に確認していることを示しています。日本の食品メーカー・輸出事業者は、取引先の米国Importer(FSVP Importer)がこれらの点をどこまで文書化・実施できているかを、契約前後を通じて確認しておくことが望ましいでしょう。
今後確認すべきポイント
- 自社が輸出する食品が、米国側FSVP ImporterのFSVPにどのような形で組み込まれているか
- リコールや品質問題が発生した場合の是正措置記録が、日本側・米国側双方で整合的に保存されているか
- 供給者証明書(HACCP認証等)のみに依拠せず、ハザード評価に基づく検証プロセスが構築されているか


