だしパック、魚醤、水産系の調味料や加工食品を米国へ輸出しようとすると、「FSVPの対象外」という説明を目にすることがあります。しかしこれは「規制がない」という意味ではありません。水産食品には、FSVPとは別の枠組みであるSeafood HACCP(21 CFR Part 123)が適用され、実務上はむしろFSVPよりも古くから存在する厳格な仕組みです。この記事では、Seafood HACCPの基本と、米国側の輸入者が負う検証義務について、日本の輸出事業者が押さえておくべき範囲に絞って解説します。
Seafood HACCPの位置づけ — なぜFSVPの対象外になるのか
FDAの食品安全規制は、原則としてFSMA(食品安全強化法)に基づくFSVP(外国供給業者検証プログラム)がベースになっています。しかし水産食品(Fish and Fishery Products)は、FSVPが制定されるより前の1997年から、独自のHACCP規制である21 CFR Part 123の対象となっています。
FSVPの規則(21 CFR 1.502)では、輸入者がすでに21 CFR Part 123のSeafood HACCP規制の対象製品を扱っている場合、その製品についてはFSVPの適用が除外される旨が定められています。ここで注意すべきは、「水産物だから規制が緩い」のではなく、「適用される規制の条文がFSVPからPart 123に切り替わる」だけだという点です。管轄が異なるだけで、規制そのものが不要になるわけではありません。
対象となる製品・ならない製品
21 CFR Part 123の対象は、人の消費に供される魚・貝類等の水産食品全般です。缶詰・冷凍・乾燥・発酵(魚醤、だし、佃煮の原料等)といった加工形態を問わず、原則として対象になります。
一方で、水産物を主原料としない加工食品(例:水産エキスをごく少量含む調味料等)については、その配合・製造工程によって適用の判断が分かれる場合があります。この境界線はFDA自身も個別の製品仕様に基づいて判断するとしており、一律の基準で断定できません。自社製品がどちらに該当するかは、原材料構成と製造工程を踏まえて個別に確認する必要があります。
HACCP計画に求められる基本構造
21 CFR Part 123は、水産食品の加工業者に対して、製品ごとのHACCP(危害分析重要管理点)計画の作成・実施を義務付けています。主な要素は次の通りです。
- 製品・工程ごとの危害要因分析(微生物、化学的危害、物理的危害)
- 重要管理点(CCP)の特定と管理基準の設定
- モニタリング手順と記録の保持
- 逸脱発生時の是正措置
- 検証手続き(HACCP計画自体が機能しているかの確認)
- 一般衛生管理(Sanitation Control Procedures)
これらは主に米国内で製品を加工・保管する施設に課される要件です。日本国内の工場がすべてこれと同一の記録体系を構築しなければならないわけではありませんが、米国側の輸入者(Importer)は、供給元である日本の工場がこれに相当する食品安全管理を行っているかを検証する義務を負います。この検証義務こそが、日本の輸出事業者にとって実務上最も関係が深い部分です。
米国側輸入者に課される検証義務(21 CFR 123.12)
Part 123.12は、水産食品の輸入者に対し、供給元(日本の製造者)が適切なHACCP管理を行っていることを検証する義務を課しています。検証の方法として、規則上は主に2つのルートが用意されています。
1. 覚書(MOU)ルート
FDAと輸出国政府との間に、水産物の安全性に関する政府間の覚書(Memorandum of Understanding)が存在する場合、その枠組みに基づいて検証要件が満たされることがあります。日本政府との間にどのような覚書が存在するかは、輸出のたびに最新の状況を確認する必要があります。
2. Verification Proceduresルート(能動的な検証手続き)
MOUによらない場合、輸入者は次のような検証手続きのうち、少なくとも一部を実施することが求められます。
- 供給者のHACCP計画・監視記録・是正措置記録の入手と確認
- 供給者施設に対する現地監査(年1回以上を想定した継続的な確認)
- 定期的な最終製品の検査(第三者機関によるサンプリング検査等)
- 上記に代わる、製品の安全性を裏付けるに足る記録の継続的な確認
輸入者はこれらの活動を通じて「合理的な保証(reasonable assurance)」を得ることが求められており、どの手法をどの頻度で組み合わせるかは、製品リスクに応じて輸入者自身が判断する仕組みになっています。この「リスクに応じた個別判断」という性質上、「これさえやれば必ず十分」という一律の正解は規則上示されていません。
日本の水産加工メーカーが実務として準備すべきこと
米国側の輸入者から検証への協力を求められた際、日本側の製造者が用意しておくとスムーズに進みやすい資料の例です(あくまで一般的な準備事項であり、個別の輸入者が求める内容は異なります)。
- 自社の食品安全管理体制の文書(HACCPプランに相当するもの。対米HACCPと完全一致していなくても、危害分析・管理点・記録の骨格が確認できる資料)
- 工程管理記録・モニタリング記録の保管状況
- 第三者認証(HACCP、ISO 22000、FSSC 22000等)を取得している場合はその証明書
- 過去の自主検査・微生物検査結果
- 原材料の受入検査記録
これらは輸入者による検証活動(現地監査や記録レビュー)にそのまま活用できるため、事前に整備しておくことで、米国側とのやり取りが円滑になります。
よくある誤解(法的要求とベストプラクティスの違い)
- 「水産物はFSVPの対象外だから、輸出者側は何もしなくてよい」→ 誤り。適用条文がFSVPからPart 123に切り替わるだけで、米国側輸入者の検証義務そのものはむしろFSVPより歴史が長く、厳格に運用されています。
- 「HACCP認証を取得していれば自動的に要件を満たす」→ 認証は検証活動を裏付ける有力な資料にはなりますが、Part 123.12が求める検証手続き(現地監査や記録確認等)を輸入者が別途実施する必要がなくなるとFDAが明言しているわけではありません。個別の輸入者の方針によります。
- 「MOUルートとVerification Proceduresルートのどちらを使うべきか」は輸入者側の判断事項であり、輸出者が一方的に決められるものではありません。
VIAWORKSができること
VIAWORKSでは、Studio 1414との連携により、21 CFR Part 123対象製品(だしパック・魚系調味料等)の輸入者側検証(Importer Verification)に対応しています。日本側の製造者から見た場合、「米国側の輸入者がどのような検証を求めてくるか」「どの資料を事前に準備しておくとスムーズか」といった実務面での整理をサポートできます。個別製品がPart 123の対象になるかどうかの判定を含め、まずは無料相談で製品情報をお聞かせください。
まとめ
水産食品の米国輸出は「FSVP対象外」という一言だけで判断せず、Seafood HACCP(21 CFR Part 123)という別の規制体系が適用されることを前提に準備を進める必要があります。特に米国側輸入者が負う検証義務(123.12)の存在を輸出者側も理解しておくことで、取引先とのコミュニケーションが円滑になり、輸出プロセス全体の停滞を防ぐことにつながります。より広いFDA対応の全体像はアメリカ食品輸出のFDA対応完全ガイドもあわせてご覧ください。
参考一次情報:21 CFR Part 123 — eCFR


