LACF規制とは|レトルト食品を米国へ輸出する前に必要なFDA登録を解説

レトルトカレー、パウチ入りの惣菜、缶入りのお茶。日本で当たり前に流通しているこれらの製品を米国へ輸出しようとすると、多くの企業が出荷直前になって初めて「LACF登録」の存在を知り、スケジュールが数ヶ月単位で狂うという事態に直面します。

FDAの施設登録(Food Facility Registration)やFSVPとはまったく別の制度であり、これらを済ませていても免除されません。しかも準備には最短でも3〜4ヶ月かかります。

この記事では、LACF規制の対象になる製品の判定方法と、必要な手続きを順に解説します。


LACFとは何か

LACFは Low-Acid Canned Food(低酸性缶詰食品) の略称です。名称に「缶詰」とありますが、缶に限らずレトルトパウチ、びん、アセプティック紙パック、シール済みのプラスチック容器もすべて含まれます。

根拠となる規則は以下の3つです。

  • 21 CFR Part 108.35 — 緊急許可管理(登録・届出の義務を定める)
  • 21 CFR Part 113 — 密封容器入り低酸性食品の熱処理
  • 21 CFR Part 114 — 酸性化食品(Acidified Food)

なぜこの規制があるのか

理由はボツリヌス菌対策の一点に集約されます。

密封容器の内部は酸素がありません。そこに酸度が低く水分の多い食品が入ると、ボツリヌス菌の芽胞が発芽して毒素を産生する条件が揃います。この毒素は微量でも致命的であり、外観や風味では判別できません。

そのためFDAは、この条件に該当する食品について「殺菌条件そのものを事前に届け出させる」という、他の食品規制とは異なる事前届出型の制度を採用しました。FSMA(食品安全強化法)が事業者による自主的なハザード管理を求めるのに対し、LACFは1970年代に整備された事前規制の枠組みがそのまま現在も機能しています。


自社製品が対象になるか判定する

判定は次の3条件のANDです。1つでも外れれば対象外となります。

  1. pH 4.6超 かつ 水分活性(Aw)0.85超(完成品の平衡値)
  2. 密封容器(hermetically sealed container)に充填されている
  3. 常温流通である(要冷蔵・要冷凍でない)

Step 1:水分活性を確認する

Aw 0.85以下なら、この時点で対象外です。粉末、乾物、菓子、高塩分の製品はここで外れます。

Step 2:pHを確認する

Aw 0.85超の場合、pHで区分が分かれます。

pH 酸性になった経緯 区分
4.6超 LACF(Part 113)
4.6以下 酸を添加して下げた 酸性化食品(Part 114)
4.6以下 元から酸性(果汁、梅干し等) 対象外
4.6以下 発酵により低下 対象外

酸性化食品も届出義務がある点は同じですが、伝熱試験の負担はLACFより軽くなります。

Step 3:明文の除外規定を確認する

以下は対象外です。

  • 酒類
  • pH 4.7未満のトマトおよびトマト加工品
  • 要冷蔵・要冷凍で流通する製品
  • 炭酸飲料、ジャム・ゼリー・プリザーブ

日本の食品での該当例・非該当例

該当する可能性が高い製品

レトルト・惣菜系 レトルトカレー、シチュー、レトルト惣菜・煮物、おでん、レトルトごはん・おかゆ、レトルト味噌汁

液体調味料・だし 液体だし、鍋つゆ、希釈タイプのつゆ

飲料 緑茶・麦茶などのお茶飲料、缶コーヒー、ミルクティー、豆乳、甘酒

水煮・缶詰 豆類の水煮、蒸し大豆、水煮のたけのこ・山菜、ツナ缶、サバ缶、栗の甘露煮

お茶飲料が該当することは意外に思われますが、pHは6前後、Awはほぼ1.0であり、条件に完全に合致します。

酸性化食品(Part 114)に該当する製品

酢漬け野菜、ピクルス、マリネ、味付けメンマ、酢を加えた惣菜、低酸性原料を多く含むドレッシング類

対象外となる製品

粉末・顆粒製品(粉末だし、粉末スープ、青汁)、乾燥だしパック、乾麺、菓子、米、海苔、醤油、佃煮、梅干し、果汁、ジャム、冷蔵・冷凍品全般

醤油は塩分濃度が高くAwが0.80程度に下がるため、pHが4.6を超えていてもStep 1で対象外になります。

判定が難しいのは味噌です。Awが0.83〜0.88と閾値をまたぐ帯にあるため、常温流通のパウチ入り製品を輸出する場合は必ず実測してください。


必要な4つの手続き

対象と判定された場合、日本の製造工場側に以下の義務が生じます。

① FCE登録(Food Canning Establishment)

FDA Form 2541をFDA Industry Systemsからオンライン提出します。工場単位で登録し、FCE番号が発行されます。手数料は無料、所要は数日〜数週間です。外国の製造施設も義務の対象です。

期限は最初の商業生産開始から10日以内と定められています。

② スケジュールドプロセスの届出

LACFはForm 2541d、酸性化食品はForm 2541eを提出し、SID(Submission Identifier)番号を取得します。

重要なのは、「製品 × 容器サイズ × 殺菌条件」の組み合わせごとに1件必要だという点です。同じ中身でも150gと200gのパウチなら別件、味違いも別件になります。SKUが10あれば10件です。

期限はFCE登録から60日以内、かつ新製品を包装する前です。

③ プロセスオーソリティによる殺菌条件の設定

②で届け出る殺菌条件は、適格なプロセスオーソリティ(Process Authority)が設定し文書化したものでなければなりません。伝熱試験(heat penetration study)を実施し、F値を算出したうえで、商業的無菌が達成されることを裏付ける設定書が必要になります。

**ここが最大の関門です。日本での殺菌条件をそのまま届け出ることはできません。**日本国内で20年販売している製品であっても、米国で認められたプロセスオーソリティによる評価が必要です。

FDAはプロセスオーソリティを認定・公表していないため、実務上は米国の大学の食品科学系機関または専門コンサルタントに依頼することになります。費用は製品あたり数千ドル、期間は数週間から数ヶ月を見込んでください。

④ Better Process Control School(BPCS)修了者の配置

殺菌工程、酸性化工程、容器の密封工程の各監督者は、FDAが認めたコースを修了している必要があります。米国の大学が実施しており、日本の工場では該当者が不在のケースが大半です。

パウチ製品の場合は、これに加えてシール強度・密封性の検査体制(Part 113.60)も求められます。


輸入者側が確認すべきこと

登録義務を負うのは製造者ですが、未登録の場合に貨物が止まるのは輸入者側です。

FDAの輸入審査ではエントリー時にFCE番号とSID番号が照合されます。未登録・未届出であれば差し止めとなり、対応が遅れれば書類検査なしの留置(DWPE)の対象となるおそれもあります。

輸入者として押さえるべきは次の3点です。

  1. 出荷前にFCE番号と当該製品のSID番号を入手し記録する
  2. プロセスオーソリティの設定書の写しを入手する
  3. 通関業者にFCE/SIDをエントリー時に申告させる

なお、**FSVP(外国供給業者検証プログラム)の負担はむしろ軽くなります。**21 CFR 1.502(c)により、Part 113に従って製造されたことを示す文書を入手すれば、微生物ハザードについての検証が免除されるためです。ただし重金属や残留農薬などの化学的ハザード、アレルゲンについては通常どおり検証が必要です。


準備期間の目安

pH・水分活性の測定 → 対象判定
        ↓
FCE登録(数日〜数週間・無料)
        ↓
プロセスオーソリティの選定・伝熱試験・設定書取得  ← 数週間〜数ヶ月
        ↓
スケジュールドプロセス届出(SKUごと)
        ↓
BPCS受講(並行実施可)
        ↓
初回出荷

ゼロから始めた場合、最短でも3〜4ヶ月が目安です。SKU数が多いほどプロセスオーソリティの作業が積み上がるため、さらに長期化します。

米国での販売開始時期が決まっているのであれば、原材料や表示の検討よりも先にLACFの段取りに着手すべきです。リードタイムの桁が違います。


よくある質問

Q. 日本の施設登録(FDA Food Facility Registration)を済ませていれば不要ですか。 いいえ。施設登録とLACF登録はまったく別の制度です。両方が必要です。

Q. 米国のOEM先で製造する場合も必要ですか。 必要です。義務は製造場所に紐づくため、米国内の工場であっても同じ手続きが求められます。

Q. 少量のテスト輸出やサンプルでも必要ですか。 商業目的の輸入であれば必要です。

Q. 「要冷蔵」にすれば対象外になりますか。 なります。ただし米国の小売で冷蔵棚に置く前提となり、ラベルに “Keep Refrigerated” の表示が必要です。流通コストと商品性が変わるため、販売戦略と合わせた判断が必要です。

Q. 日本で測定したpHのデータは使えますか。 判定には使用できます。ただしpH 4.5〜4.7の境界域にある製品は、測定誤差を考慮して米国側で再測定することを推奨します。

Q. 水分活性が0.85ちょうどの場合は。 定義は「0.85超」であるため対象外側になります。ただし境界値は測定誤差で変動するため、実務上は0.83以下でなければ安全とは言えません。


まとめ

  • LACFの対象はpH 4.6超・Aw 0.85超・密封容器・常温流通の4条件がすべて揃う製品
  • レトルト惣菜、お茶飲料、水煮、液体だしなど、日本の主力輸出品の多くが該当する
  • 必要なのはFCE登録・スケジュールドプロセス届出・プロセスオーソリティによる設定・BPCS修了者の配置の4点
  • 日本の殺菌条件をそのまま届け出ることはできない
  • 準備には最短3〜4ヶ月を要するため、輸出計画の初期段階で着手すべき

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別案件についての法的助言ではありません。製品ごとの判定については専門家にご相談ください

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この記事の監修・運営について

VIAWORKS 輸出サポートチーム

VIAWORKS 輸出サポートチーム

米国食品規制・輸出実務に携わり、FSVP Qualified Individual(QI)としてFDA・FSVP対応や米国向け食品輸出を支援しています。規制情報を扱う記事では、FDA・USDA・CBP等の公的機関・一次情報を優先して確認しています。