米国向け食品のアレルゲン表示ガイド|9大アレルゲン・ゴマ義務化・Contains表示のルールを解説

目次

  1. 米国のアレルゲン表示制度(FALCPA)の基本
  2. 9大アレルゲンとは何か
  3. 2023年のゴマ表示義務化(FASTER Act)
  4. 表示の書き方:3つの要素を正確に理解する
  5. 対象外・例外となるケース
  6. 日本の表示制度との違い
  7. 日本食品の実務例
  8. Ingredient Statement・Contains文の記載例
  9. 次に確認すべきこと
  10. まとめ

日本の食品表示制度に慣れていると、見落としがちなのが米国のアレルゲン表示ルールです。日本の「特定原材料8品目」と米国の「主要食物アレルゲン9品目」は対象がほぼ重なりますが、完全に一致するわけではなく、表示の書き方のルールも異なります。

この記事は、法律そのもの(FALCPA・FASTER Act)に加えて、FDAが2025年1月に公表した最新のガイダンス(Guidance for Industry: Questions and Answers Regarding Food Allergen Labeling, Edition 5)の内容も反映しています。法律で決まっている法的要求事項と、FDAの現時点の考え方を示すガイダンスは性質が異なるため、本文中でも区別して記載します。

1. 米国のアレルゲン表示制度(FALCPA)の基本

米国では2004年に成立した食品アレルゲン表示・消費者保護法(FALCPA)により、主要食物アレルゲンを含む食品には、その原材料源を明記することが義務付けられています。

【法的要求事項】FALCPAの対象となる「主要食物アレルゲン」を含む加工食品は、原材料表示の中でアレルゲンの原材料源が消費者に分かる形で明記されていなければなりません。

2. 9大アレルゲンとは何か

FALCPA制定当初、主要食物アレルゲンは8品目でした。2021年のFASTER Actにより、2023年からゴマが加わり、現在は以下の9品目が対象です。

# アレルゲン
1 乳(Milk)
2 卵(Eggs)
3 魚(Fish)
4 甲殻類(Crustacean shellfish)
5 木の実(Tree nuts)
6 落花生(Peanuts)
7 小麦(Wheat)
8 大豆(Soybeans)
9 ゴマ(Sesame)

【FDAガイダンス(Edition 5、2025年1月)による定義の明確化】法律の条文自体は変わっていませんが、FDAは2025年1月に公表した最新のガイダンスの中で、「乳」「卵」の対象範囲についての考え方を次のように明確化しています。

  • 乳(Milk): 牛だけでなく、ヤギ・ヒツジなど、他の反芻動物(ruminants)の乳も対象に含まれる、とする考え方が示されています。
  • 卵(Eggs): 鶏卵だけでなく、アヒル・ガチョウ・ウズラなど、他の家禽の卵も対象に含まれる、とする考え方が示されています。

【重要な注記】上記はあくまでFDAのガイダンス、つまり「FDAの現時点の考え方」を示す文書での言及であり、FALCPA・FASTER Actという法律そのものが改正されたわけではありません。ガイダンスは法的拘束力を持つ規則ではありませんが、FDAの検査・指導の基準になる文書であるため無視してよいものではありません。

日本の食品表示基準の「特定原材料」8品目(えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生)と比べると、そば(buckwheat)は米国の9大アレルゲンには含まれておらず、米国は魚・甲殻類・大豆・ゴマも対象にしている点で違いがあります。

3. 2023年のゴマ表示義務化(FASTER Act)

【法的要求事項】2023年1月1日以降に製造される包装食品・サプリメントには、ゴマを主要食物アレルゲンとして表示することが義務付けられています。

FDAは、2023年より前に製造され、すでに流通・店頭に並んでいた在庫については、義務化を理由に回収する必要はないとしています。日本から輸出する食品が2023年以降に製造されたものである以上、この経過措置の対象にはならない点に注意してください。

【VIAWORKSとしての実務推奨】味噌・醤油・ドレッシング・菓子・調味料など、ゴマやゴマ油を原材料に使う日本の食品は多く、これまで英語ラベルにゴマの記載があっても「アレルゲンとして」明記されていない例が見受けられます。2023年以降に作成されたラベルであっても、表示方法(次章参照)が正しいかどうかは再確認する価値があります。

4. 表示の書き方:3つの要素を正確に理解する

「括弧書き」と「Contains文」という2つの方法として単純化されがちですが、FDAガイダンスに基づくと、実際には次の3つの要素の関係として理解する必要があります。

(1) 原材料の一般名・慣用名そのものがアレルゲン源を示している場合
たとえば「小麦粉(wheat flour)」のように原材料名自体に「小麦」が含まれる場合、その原材料についてはそれ以上の追加表示は不要です。

(2) 括弧書きによる表示(Parenthetical Declaration)
原材料の一般名・慣用名だけではアレルゲン源が伝わらない場合に用います(例:「whey(milk)」「ovalbumin(egg)」「gelatin(cod, haddock, pollock)」)。

(3) 「Contains」文(Contains Statement)
原材料表示の後に、含まれる主要食物アレルゲンをまとめて明記する方法です。【FDAガイダンスが明記する重要なルール】として、Contains文を使用する場合、そのアレルゲンがすでに原材料表示の中で明記されているかどうかにかかわらず、製品に含まれるすべての主要食物アレルゲンをContains文に列挙する必要があります。

つまり、「小麦粉」と原材料表示に書いてあるからといって、Contains文で小麦の記載を省略してよいわけではありません。Contains文を使うと決めた場合は、そこに全アレルゲンを漏れなく列挙する、という点が実務上のミスが起きやすいポイントです。

5. 対象外・例外となるケース

【確認済み事実】FALCPAに基づく主要食物アレルゲンの表示義務は、FDAが管轄する加工食品に適用されます。以下は、FDAではなく別の連邦機関が管轄するために対象外となる、あるいは適用範囲が限定されるカテゴリーです。FDAが管轄する食品全般が対象外になるわけではない点に注意してください。

  • 食肉・家禽肉、および一部の加工卵製品: 食肉(連邦食肉検査法)、家禽肉(家禽製品検査法)、なまず、および液卵・凍結卵・乾燥卵等の「加工卵製品」(卵製品検査法に基づきUSDAが管轄するもの)は、USDAの管轄下にあり、FDAの主要食物アレルゲン表示義務の対象外です。ただし、殻付きの卵そのものや、FDA管轄食品の原材料として使用される卵は、引き続き主要食物アレルゲン「卵(Eggs)」としてFDAの表示義務の対象です。「卵を使っているから一律で対象外」ではない点に注意してください。
  • アルコール・タバコ税務貿易局(TTB)管轄のアルコール飲料: TTBが管轄するアルコール飲料はFDAのアレルゲン表示義務の対象外です。ただし、すべてのアルコール飲料が一律にTTB管轄というわけではなく(アルコール度数や原料の組み合わせによってはFDA管轄となる製品もあります)、FDAガイダンス自体も「該当する機関に個別に確認すること」としています。自社製品がどちらの管轄になるかは、事前に個別確認が必要です。
  • 消費者の注文に応じてその場で包装される食品: 小売店・飲食店で消費者の注文に応じてその場で紙や箱に包装される食品(例: 注文を受けてから紙で包んで提供するサンドイッチ)は、FDAのアレルゲン表示義務の対象外です。一方で、小売店で販売するためにあらかじめ包装(プレパッケージ化)された食品は、この例外の対象ではなく、通常どおり表示義務の対象になります。「量り売りだから対象外」ではなく、「消費者の注文に応じてその場で包装したかどうか」が基準である点に注意してください。
  • 農産物そのもの(Raw Agricultural Commodities): 加工されていない生鮮の農産物そのものは対象外です。

さらに、FDAガイダンスは以下2点も明確にしています。

  • 高度精製油(Highly Refined Oils): 主要食物アレルゲンに由来する高度精製油(精製・脱色・脱臭済みの油)は、アレルゲン表示義務の対象外です(FD&C Act第403条(w))。ただし、油の原材料名自体(例:「大豆油」)は原材料表示に引き続き記載する必要があります。「アレルゲン表示は不要だが、原材料名としての記載は必要」という2段階の扱いになる点に注意してください。
  • 偶発的添加物(Incidental Additives): 加工助剤など、通常は原材料表示自体が免除される「偶発的添加物」であっても、アレルゲン表示の義務は免除されません。製造ライン上の加工助剤として小麦由来の成分が使われた場合、原材料表示は不要でも、アレルゲン表示(Contains文等)は必要になる場合があります。

6. 日本の表示制度との違い

日本の食品表示基準では、表示義務のある「特定原材料」8品目と、表示が推奨される「特定原材料に準ずるもの」約20品目という2段階の枠組みがあります。米国のFALCPA/FASTER Actには、この「推奨」という中間区分がなく、9大アレルゲンは一律で法的表示義務の対象です。

【VIAWORKSとしての実務推奨】日本語ラベルの特定原材料表示をそのまま英訳して米国向けラベルに転用するのではなく、米国の9大アレルゲンの枠組みに沿って原材料を棚卸しし直すことを推奨します。

7. 日本食品の実務例(典型的な配合を前提とした整理)

以下は、日本の代表的な食品カテゴリーにおける「典型的な配合例」を前提とした整理です。同じ品目名であっても、メーカー・商品ごとに配合は異なるため、実際のアレルゲン表示は必ず自社製品の原材料表を個別に確認してください。

食品カテゴリー 典型的にアレルゲンと関連しうる原材料 確認しておきたいポイント
醤油 小麦、大豆 一般的な醤油は小麦・大豆を原料とするが、「たまり醤油」等は小麦を使わない配合もあり、製品ごとに異なる
だし(かつお節ベース) 魚(かつお/英語表記例: bonito, skipjack tuna) FDAガイダンス上、「fish」という一般名だけで表示することはできず、具体的な魚種(例: bonito)を明記する必要がある。原材料の一般名自体が魚種を示している場合(例: 「bonito flakes」)は追加の括弧書きは不要だが、一般名だけで魚種が伝わらない名称(例: 単なる「fish stock」)を使う場合は、括弧書きまたはContains文で魚種を明記する必要がある
ごまだれ・ごまドレッシング ゴマ 主原料としてゴマを使うため、Contains文への記載漏れが起きやすい典型例
味噌 大豆、(麦味噌の場合は小麦) 米味噌・麦味噌・豆味噌で原料構成が異なる
焼き菓子・クッキー類(洋菓子) 小麦、卵、乳(配合により異なる) 小麦・卵・乳のいずれが含まれるか、またその組み合わせはレシピごとに異なるため、特定のアレルゲンが必ず含まれると一般化はできない。原材料表・配合表に基づく個別確認が必須

8. Ingredient Statement・Contains文の記載例

実際のラベル表記のイメージを、ごまだれ(ゴマ・醤油ベースの調味料を想定した例)でみてみます。

Ingredients: Soy Sauce (Water, Soybeans, Wheat, Salt), Sesame Paste, Sesame Oil, Sugar, Rice Vinegar.
Contains: Wheat, Soy, Sesame.

このポイントは、原材料表示の中で「Soybeans」「Wheat」という一般名がすでにアレルゲン源を示しているため追加の括弧書きは必須ではないこと、それでもContains文を使う場合は原材料表示上ですでに分かる小麦・大豆も含め、製品に含まれる主要食物アレルゲンをすべて列挙することです(本記事4章のルール)。

実務フローのイメージ

  1. 日本語の原材料表(配合表)を確認する
  2. 各原材料を英語の一般名・慣用名に変換し、Ingredient Statementを作成する
  3. 一般名だけでアレルゲン源が伝わらない原材料には括弧書きを追加する(例:魚の具体的な種類)
  4. Contains文を使う場合は、原材料表示上の記載の有無にかかわらず、含まれる9大アレルゲンをすべて列挙する

この一連の変換作業は、日本語の原材料名と英語表記のずれ、そして「一般名だけで足りるか、括弧書きが要るか」の判断が必要になるため、実務上つまずきやすい工程です。

9. 次に確認すべきこと

アレルゲン表示は、米国向け食品ラベル全体(原材料表示・Nutrition Facts・NG表記の回避等)の一部です。ラベル全体の要件はアメリカ食品輸出のFDA対応完全ガイドでも整理しています。また、実際に避けるべきNG表記の事例はこちらの記事であわせてご確認ください。

まとめ

米国向け食品のアレルゲン表示は、日本の特定原材料表示と似ているようで、対象品目・表示方法ともに異なる独自の制度です。2023年のゴマ義務化に加え、2025年のFDAガイダンス改訂で乳・卵の対象範囲の考え方も明確化されています。特にContains文を使う場合は「原材料表示に書いてあるから省略してよい」という誤解が実務上多く見られるポイントであり、注意が必要です。

ご相談について

VIAWORKSでは、日本語の原材料表(配合表)をもとに、米国向けIngredient Statement・アレルゲン表示(Contains文・括弧書き)を含むFDA食品ラベル全体の確認・作成を支援しています。自社製品のラベルがFALCPA・FASTER Act・FDA最新ガイダンスに沿っているか確認したい場合はご相談ください。

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参考・出典

  • FDA, Guidance for Industry: Questions and Answers Regarding Food Allergen Labeling (Edition 5), 2025-01-07 — fda.gov
  • Federal Register, Questions and Answers Regarding Food Allergens…(Edition 5): Guidance for Industry; Availability, 2025-01-07 — federalregister.gov
  • FDA, Questions and Answers Regarding Food Allergens (Edition 4)(旧版、比較参照。魚・甲殻類の種類特定ルール、USDA管轄「加工卵製品」の範囲、TTB管轄アルコールの扱い、注文対応時包装の例外の出典)— fda.gov/media/117410
  • FDA, What Are Major Food Allergens?fda.gov/media/164289
  • FDA, FASTER Act: Sesame as the 9th Major Food Allergenfda.gov
  • Food Allergen Labeling and Consumer Protection Act of 2004(FALCPA)/FD&C Act Section 403(w)
  • Food Allergy Safety, Treatment, Education, and Research (FASTER) Act of 2021

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この記事の監修・運営について

VIAWORKS 輸出サポートチーム

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米国食品規制・輸出実務に携わり、FSVP Qualified Individual(QI)としてFDA・FSVP対応や米国向け食品輸出を支援しています。規制情報を扱う記事では、FDA・USDA・CBP等の公的機関・一次情報を優先して確認しています。