米国へ食品を送るとき、FDAには「Prior Notice(事前通知)」という手続きがあります。施設登録やFSVPと並べて語られることが多いものの、「誰が」「いつまでに」「何を」出すのかは、輸出者にとって分かりにくい部分です。この記事では、21 CFR Part 1 Subpart I とFDAのガイダンスに基づいて、日本の食品事業者が押さえておきたい点を整理します。
Prior Noticeとは
Prior Noticeは、米国に輸入される(または輸入のために持ち込まれる)人用・動物用の食品について、到着前にFDAへ情報を通知する制度です。FDAは、食品が到着する前に内容を把握するための仕組みとして運用しています。事前通知が不十分な食品は、入国時に拒否されることがあります。
似た名前の手続きとは役割が異なります。
| 手続き | 何に対する手続きか | タイミング |
|---|---|---|
| FDA施設登録 | 食品を製造・加工・包装・保管する施設 | 施設ごと(定期的な更新あり) |
| FSVP | 米国の輸入者による海外供給者の検証 | 輸入前から継続 |
| Prior Notice | 個々の輸入貨物(出荷ごと) | 到着前の所定の時間まで |
施設登録とFSVPについては、FDA施設登録と米国代理人、FSVPとはをご覧ください。全体の流れはアメリカ食品輸出のFDA対応で整理しています。
いつまでに提出するか
21 CFR 1.279(a)は、到着の何時間前までにPrior Noticeを提出し、FDAが確認(confirm)している必要があるかを、輸送手段ごとに定めています。
| 輸送手段 | 到着の何時間前まで |
|---|---|
| 陸路(道路) | 2時間前 |
| 陸路(鉄道) | 4時間前 |
| 航空 | 4時間前 |
| 海上 | 8時間前 |
早すぎる提出もできません。1.279(b)では、CBPのABI/ACE経由の場合は到着予定日の30暦日前から、FDAのPNSI(Prior Notice System Interface)経由の場合は15暦日前から提出できるとされています。国際郵便には別の扱いがあります(1.279(c))。また、時間の起算は、FDAが確認した時点からです(1.279(d))。
上記は最低限の期限です。実務では、書類の不備による修正や通関業者とのやり取りを考えると、余裕をもって準備しておくのが一般的です(実務上の目安であり、法的要求事項ではありません)。
誰が提出するか
FDAのガイダンスでは、必要な情報を把握している人であれば誰でもPrior Noticeを提出できる(submitter)とされています。実際に情報を送信する人(transmitter)は、submitterと同じ人でも別の人でも構いません。送信者は海外にいても構わないとされています。
提出方法は主に2つです。
- ABI/ACE(CBP経由): 通関業者(ブローカー)など、CBPの認定を受けた参加者が送信します。通関と一緒に進める場合に一般的です。
- PNSI(FDA直接): CBPを経由しない提出者向けのFDAのシステムです。国際郵便の貨物などで使われます。
日本の輸出者にとって大切なのは、「誰が出すのか」を出荷前に取引先と決めておくことです。多くのケースでは、米国側の通関業者や輸入者が送信を担当しますが、その場合でも、製造者情報や商品情報などの元データは輸出者側から提供する必要があります。担当を決めずに出荷すると、到着直前に情報が足りないという状況になりかねません。
提出に必要な情報
必要な項目は、輸入の種類(通関の方法)、輸送手段、食品が自然な状態かどうかなどによって変わります(21 CFR 1.281)。FDAのガイダンスで示されている主な項目は次のとおりです。
- 製造者: 自然な状態でない食品の場合、製造者の名称と、FDA施設登録番号(施設の市・国を含む)。登録番号を記載しない場合は、住所の全体とその理由を示す必要があります。
- 生産者(grower): 分かっている場合に必要です。
- 商品の特定: FDA製品コード、包装サイズ、製造者または生産者が異なる場合は、それぞれ別のPrior Noticeになります。ブランド名は必須ではありません。
- 最終荷受人(ultimate consignee): 食品の配送先(倉庫などを含む)。
- 到着予定時刻: 到着する港への予定時刻。
出荷前に、製造者(自社または製造委託先)がFDA施設登録を済ませているか、登録番号を把握できているかを確認しておくと安心です。登録の更新については施設登録の更新をご覧ください。
不備があった場合どうなるか
FDAのガイダンスでは、事前通知が「不十分(inadequate)」な場合として、通知がない、情報が不正確、期限に間に合わない、の3つが挙げられています。この場合、食品はFD&C Act 801(m)(1)に基づき入国を拒否される可能性があります。拒否された食品は、CBPの同意のもとで米国外へ搬出するか、港の範囲内で保管されることになり、輸入者や荷受人に引き渡すことはできません。
また、Prior Noticeの確認番号(PN Confirmation Number)を取得していても、あとでFDAが情報の不正確さを見つけた場合は、拒否の可能性が残ります。入力内容が出荷の実態と一致しているかを、提出前に確認することが大切です。なお、拒否や保留の判断について、FDAに再検討を求める場合は、5暦日以内に申請する必要があるとされています。
対象外になるケースと、見落としやすい点
FDAのガイダンスが示している対象外の例には、個人使用の食品、ビジネス目的ではない家庭製の贈答品、米国の港に到着後そのまま積み戻される食品、USDAの専管下にある食肉・家禽・卵製品などがあります。
注意したいのは、サンプルです。ガイダンスでは、数量や金額が小さいこと、研究開発用のサンプルや試験販売用のサンプルであることは、Prior Noticeの対象外にはならないとされています。展示会や商談のために少量の見本を送る場合でも、原則としてPrior Noticeの検討が必要です。なお、USDA管轄の食肉製品の扱いは、品目や用途によって異なる場合があるため、個別に確認してください。
出荷前の確認チェックリスト
- Prior Noticeを誰が送信するか(輸入者・通関業者・その他)を決めているか
- 製造者のFDA施設登録番号が有効で、更新漏れがないか
- 商品ごとのFDA製品コード、包装サイズが分かっているか
- 最終荷受人(配送先)の情報が決まっているか
- 輸送手段ごとの提出期限に間に合うスケジュールか
- サンプル品など、少量の出荷でも対象になることを把握しているか
- ラベルやFSVPなど、他の要件の準備も進んでいるか(FDAラベルの注意点)
VIAWORKSに相談できること
VIAWORKSでは、日本の食品事業者の米国輸出について、FDA施設登録・米国代理人(FDAエージェントのページ)やFSVPなどの対応を支援しています。Prior Noticeについては、出荷にあたって自社の状況でどの情報が必要になるか、誰が送信する体制になっているかといった整理から、まずご相談いただけます。個別の出荷内容によって必要な対応が異なるため、お問い合わせよりご連絡ください。
参考情報(一次情報)
- eCFR 21 CFR Part 1 Subpart I(Prior Notice of Imported Food)
- eCFR 21 CFR 1.279(提出期限)
- FDA: Prior Notice of Imported Food(Questions and Answers、非拘束ガイダンス)
- FDA: Filing Prior Notice of Imported Foods
※最終確認日: 2026年10月27日。規制や運用は変更される場合があります。最新の内容はFDAの公開情報をご確認ください。




