米国のFDA(食品医薬品局)は、FSVP(外国供給業者検証プログラム)を実施していない輸入者に対し、Warning Letter(警告書)を発行し、FDAのウェブサイトで公開しています。2026年に公開された書簡の中には、抹茶・緑茶製品の輸入者に出されたものも含まれます。
この記事では、FDAが公開している2026年の警告書を一次情報として確認し、何が問題とされたのか、日本の輸出者にどう関係するのかを整理します。
目次
- FSVPのWarning Letterとは
- 2026年にFDAが公開した警告書の事例
- 書簡で共通して示されていた内容
- 日本の輸出者にどう影響するか
- 警告書を避けるために、輸出者が確認すべきこと
- まとめ
FSVPのWarning Letterとは
Warning Letterは、FDAが検査で違反を確認した事業者に対し、是正を求めて送る文書です。FSVPの場合、FDAが輸入者の拠点を検査し(FSVP inspection)、その結果として発行されます。宛先は米国の輸入者(FSVP Importer)です。日本の製造者・輸出者に直接送られるものではありません。
FSVPの法的根拠は、FD&C Act(連邦食品・医薬品・化粧品法)第805条と、21 CFR Part 1 Subpart L(1.500〜1.514)です。FSVPの全体像はFSVPとは、必要な書類はFSVPで必要な書類・記録で解説しています。
2026年にFDAが公開した警告書の事例
FDAの公開ページで確認できた、2026年のFSVP関連の警告書のうち4通を整理します(いずれも輸入者宛て。FDAのページに事業者名が公開されています)。
| 発行日 | 宛先(輸入者) | FDAが指摘した食品の例 | 指摘された条項 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月15日 | The Great Smart African Food LLC | メイズ粉、ビスケット、粉乳 | 21 CFR 1.502(a) |
| 2026年4月10日 | Prida Import Export LLC | 粉乳、ソース、チョコレート菓子 | 21 CFR 1.502(a) |
| 2026年5月14日 | Bharat Overseas Inc. | バスマティ米、マンゴーパルプ、フェヌグリーク種子 | 21 CFR 1.502(a) |
| 2026年6月8日 | Vivot LLC | 抹茶・緑茶製品(3製品) | 21 CFR 1.502(a) |
この4通は、いずれもFSVPそのものを作成・維持・実施していなかったことが指摘されています。ここでは公開されている警告書の一部を確認しただけで、FDAの執行全体の傾向を示すものではありません。
書簡で共通して示されていた内容
確認した4通では、次の点が共通していました。
- 指摘の内容: 21 CFR 1.502(a)に基づき、輸入する食品ごとにFSVPを作成・維持・実施する必要があるが、それがなされていないという指摘です。書簡には「この記載はすべてを網羅するものではない」旨も書かれています。
- FDAが示した措置の可能性: FD&C Act第801条(a)(3)に基づく輸入拒否、Import Alert 99-41によるDWPE(現物検査なしの輸入保留)の可能性が示されています。また、第805条に適合したFSVPなしに食品を輸入することは、第301条(zz)で禁止される行為だと説明されています。
- 回答期限: 書簡の受領から15営業日以内に、是正措置と裏付け資料(FSVPの写しや実施記録など)を提出するよう求められています。
- 検査後の対応: 確認した書簡の複数で、検査時に交付されたForm FDA 483aへの回答がなかったことにも触れられています。
なお、FDAが実際にどの製品に措置を取るかは個別の判断です。ここに挙げた措置は、書簡の中で「可能性」として示されたものです。
日本の輸出者にどう影響するか
警告書の宛先は米国の輸入者ですが、輸出者にとって無関係ではありません。FDAが書簡で示した措置が現実になった場合、その輸入者が扱う日本製品の出荷が止まる可能性があるためです。これは書簡の記載からの推論であり、個別のケースは異なります。
ここで、FSVPの法的な責任の所在を整理します。
- 法的要求事項: FSVPを実施する責任は、米国の輸入者(FSVP Importer)にあります。日本の製造者が自らFSVPを作成する義務を負うわけではありません。
- 実務上の関係: 輸入者がFSVPを実施するには、日本側のハザード分析、衛生管理、検査記録などの情報提供が必要になります。輸入者が十分に対応できていないと、輸出者側の取引にも影響が出ます。
- VIAWORKSの見解: 輸出者が「FSVPは輸入者の問題」と考えて何も確認しないままにすると、出荷後に問題が表面化します。輸出前に、輸入者がFSVPを用意しているかを確認することを推奨します。
Vivot LLCの書簡のように、日本の抹茶・緑茶が関わるケースも公開されています。ただし、書簡は個々の製品の安全性を問題にしたものではなく、FSVPが作成されていないことを指摘したものです。
警告書を避けるために、輸出者が確認すべきこと
輸出者として、次の点を輸出前に確認しておくことを推奨します(VIAWORKSとしての実務上の推奨です。個別の輸入形態によって必要な対応は異なります)。
- 誰がFSVP Importerか決まっているか。 通関時には、輸入者の名称、メールアドレス、施設識別子(unique facility identifier)をFDAに電子的に提出することが21 CFR 1.509で定められています。輸入者が誰になるかは、取引形態(直接輸出、現地パートナー経由など)によって変わります。
- 輸入者が対象製品のFSVPを実際に持っているか。 「持っている」と口頭で聞くだけでなく、製品ごとのハザード分析やサプライヤー検証の記録があるかを確認します。
- 輸入者から求められる資料に対応できるか。 ハザード分析の根拠、製造工程、検査成績書、監査報告書などの提供を求められる場合があります。必要書類の全体はFSVPで必要な書類・記録を参照してください。
- Qualified Individual(QI)が関与しているか。 FSVPの作成・実施は、QIが行う必要があります。誰が担当できるかはFSVP Qualified Individualとはにまとめています。
- 自社が簡易FSVPの対象になるか。 一定の条件を満たす小規模な事業者には、要件が軽減される制度があります。詳しくは簡易FSVPの適用条件をご覧ください。
自社で輸入者を探せない場合や、輸入者側のFSVP対応に不安がある場合は、FSVPエージェント(輸入者として、またはFSVPの実施を支援する立場)という選択肢があります。VIAWORKSは、FSVP QI資格者として、FSVPの作成と実施の支援を行っています。サービスの詳細はFSVPエージェントのページ、ご相談はお問い合わせからどうぞ。
まとめ
2026年にFDAが公開した警告書の例では、FSVPを作成していない輸入者に対し、輸入拒否やImport Alert 99-41による保留の可能性が示されています。責任は米国の輸入者にありますが、日本の輸出者にとっても、取引の継続に関わる問題です。輸出前に、誰が輸入者になり、FSVPが整っているかを確認しておくことが実務上の第一歩です。
参考(一次情報)
- eCFR 21 CFR Part 1 Subpart L(Foreign Supplier Verification Programs)
- FDA Warning Letters: 上記表の各書簡ページ(FDA.gov)
※最終確認日: 2026年10月26日。FDAの警告書は随時追加されます。最新の状況はFDAの公開ページでご確認ください。




